「名護広報誌に国『待った』/シュワブ遺跡写真掲載」(沖縄タイムス・6/1)
米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部移設に伴う埋蔵文化財の調査結果を掲載した同市広報誌の配布を那覇防衛施設局が三十一日、「米軍との調整がついていない」として、市側に一時見合わせるよう求めていたことが分かった。施設局と米軍の取り決めで、写真などの公表は米側の事前の「許可」が必要とされていたためという。自治体の広報誌に国が「待った」をかける異例の事態。文化財調査にも“介入”してくる政府の慌てぶりに米軍への過剰な配慮が垣間見れる。市教委は施設局に、掲載内容を事前に伝え了解を得ていた。発掘現場以外に、軍施設など「機密」に該当する可能性がある写真は一切ない。このため、調査結果を二ページにわたり掲載した広報誌二万部を三十一日午前から配布し始めた。ところが大半を配り終えた同日午後になって、施設局側は、事前に米側からの「許可」を得ていないことを理由に配布を一時見合わせるよう求める「ドタバタ」ぶり。市には米軍と施設局のこうした取り決めがある事自体、知らされていなかった。市は対応を協議した結果、予定通り広報誌は配布された。島袋吉和市長は「市側の考えは伝えた。(配布は)当然だと思う」とコメントした。日米地位協定に詳しい法政大学の本間浩教授(国際法)は「日本政府に基地内の文化財保護にどう対処するかきちんとしたルールがないのが、本質的な問題。個別対応では、取り決めさえ自治体に知らされず、米軍に過度に配慮した運用になる」と指摘する。試掘調査の結果、土壌からは約百五十年前の壺屋焼とみられる陶器片一点、同年代以降と推測される稲の花粉が検出された。畑跡とみられる遺構二カ所と、石積みや道として利用したと思われる部分も確認できた。同教委は「辺野古地区の畑や田んぼの状況が分かる遺跡と考えられ保存が望ましい」と施設局へ報告する。施設局は計画を変更し現場保存するか同予定地で開発を実施する場合は、記録保存のための本格的な発掘調査が必要となる。(知念清張、石川亮太)