一瀬弁護士のお話(1)
■現在の三里塚闘争の攻撃強まりを見るにつけ、闘いの新たな展開が求められている、という感を深くしています。この点を含めて顧問弁護団の立場から問題提起したいと思います。■私も20年以上、三里塚闘争とりわけ裁判闘争に関わってきました。鈴木幸司さんとは1980年代に成田用水問題で、何年もともに闘い、たくさんのことを教えていただきました。
■空港会社によって、共有物分割請求という形をとった鈴木さんの一坪共有地裁判、そしてすでに控訴審に入っているもう一方の一坪共有地裁判への攻撃についてもどう捉えていくか、重要な課題だと思います。
■両者について共通する問題と異なる問題があります。まず共通する問題について。まず、どちらも三里塚闘争への激しい弾圧、攻撃だという点で共通しています。2番目として両者ともに「三里塚地区周辺に土地を持つ会」という組合の合有財産だという点が、共通する問題です。合有とは組合有と言い換えてもいいと思いますが、個人では売り買いできない財産という意味です。ここが共有とは違います。共有の方は個人で、自分の持分権を売り買いあるいは処分することができます。しかし合有の方はちがいます。そもそも分割請求できない権利だということなんです。
■3番目として、請求が現物請求ではなく、全面的価格賠償請求という形で、金銭でむりやり取り上げるという形で行われてきていることです。共有物の分割というのは、民法に規定がありますが、あくまで現物による分割が原則です。それを金銭で補償することをもて共有物を取り上げようというのが、両者に共通して、かけられている攻撃です。
■そもそも財産をむりやり取り上げられる法律というのは、収用法しかないわけです。当事者間に売買に関する契約もないのに契約を強制するような裁判はそもそも起こすことができないわけです。契約自由の原則があるわけですから。ところが、一坪共有地で空港会社、県がやってきているやり方はこの売買を強制する、という効果をもたらす、とんでもない裁判なわけです。
■確かに最高裁判所が、きわめて例外的な案件で「全面的価格賠償方式」という名の金銭補償での共有物分割を認めた判決を出しました。しかし、これは例外中の例外の事件であって、三里塚の一坪裁判にはまったくあてはまらない事例です。財産の性格もまったくちがう。それをいっしょくたにして、価格賠償で取ろうとしている。これは論理も何もないやり方です。(続く)